2007-02-03

「生みたくない人」に生んでもらう方法を考えるよりも、「生みたいけど生めない人」への支援を考える方が効果的

政治家としてあの失言はまずいだろうと思うものの、みんな言葉だけを捕らえてヒステリックに叩きすぎだよなあ、と思っていた例の「生む機械」発言。擁護するつもりはないけど、テレ朝の橋下弁護士発言、とりわけ以下の部分に深く同意。

テレ朝で橋下弁護士がコメンテーターらと対立し、柳沢大臣を徹底擁護

ボクは生むことが素晴らしいとは思いません。○○(聞き取れず)い人生だってあるし、いろんな事情で産めない方も居るし、それはいろいろある。そういうことをここでは言っていないとおもう。唯一柳沢さんが問題だったのは、子供を生むと言う機能は男にはないのだから、生むと決めた人には出来る限りの補償をする、働く女性に対する権利はものすごく労働基準法なんかで守られているけど、家庭内の専業主婦で子供が生まれた主婦に対しては何の補助も援助も無い、それを援助していきましょう、機械と言う表現はともかくとして、機械であるなら円滑に回るようにいろんな潤滑油なり何なり与えないと・・・・

たとえ話ってのは「分かりにくい話を分かりやすくする」ために使うもので、子供を生む、生む人を支援する、という非常に分かりやすい話を「機械」だとか「潤滑油」などのたとえ話を使う必要は全く無いとは思いますが。まあその部分はおいといても、発言の内容は実にまっとう。

少子化対策というと「結婚してるけど子供がいない人」「結婚していない人」に焦点が当たっていますが、それよりも「結婚してすでに子供がいるが、第二子、第三子をあきらめている人」に焦点を絞ったほうがよっぽど効率的だ、と言う話がなされないのは何故なのでしょう。

こちら、国立社会保障・人口問題研究所がやってる「妊娠と出産に関する全国調査」

http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou12/doukou12.pdf

さてこの中の、「結婚持続期間別に見た、平均理想子供数と平均予定子供数」のデータ。


        (http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou12/point12.pdf)

人口が減少しないために必要な出生率は2.1。例えば30歳以上の未婚率を3割と仮定しても、この「平均理想子供数」が達成できれば、少子化問題はかなり解決に向かうのでは?

じゃあ何故「予定子供数」が「理想子供数」を下回るかという理由を見ると。



圧倒的に多いのが「子育てや教育にお金がかかりすぎるから、これが全体の62%(複数回答)。続く理由が「高年齢で生むのはいやだから」で33%であることを考えると、経済的保証が完璧になされたからといって必ずしもこの「理想子供数」が達成されるかというと、そうはならないのだろうけど。それでも、第二子、第三子に対して手厚い経済的補助がなされれば、経済的理由で子供をあきらめる割合はかなり減るのでは?

(あと、高年齢で生みたくない、っていうその理由には、勿論身体的な問題もあるのだろうけど、「高年齢で生んだら、子供の成長まで経済的に支援できるか不安」ってのも含まれている気がします)

勿論、難しいのがこの「経済的保証」の部分で、例えば同じ「経済的理由で生まない」って答えている人の中にも「学校は普通に公立に行かせるならもう一人生めるけど、子供一人あたりの教育にはしっかりお金をかけて、良い学校に行かせたいから、もう一人は生まない」って人もいれば、「もう一人生んだら、家族が生活していくことすら苦しい」って人もいるわけで。誰に、どういう基準で支援を行うかについては様々なシミュレーションが必要なのだろうけど。例えば、子供一人当たり幾らの支援があれば2人目、3人目を生む気になるのか、学校や医療機関などの公的機関をどこまで無料にできるか、といった検討を行うことは、意味のあることだと思う。

「結婚しようとしない、生もうとしない人にどうやったら結婚してもらえるか、生んでもらえるか」を検討するという戦術レベルどころか戦略すら定まっていない部分に力を注ぐよりは「2人目、3人目を欲しいけど経済的理由から埋めない人に、どうやったら生んでもらえるか」という戦術を考えるほうが、よっぽど費用対効果が良いと思いますがね。

3 comments:

Anonymous said...

非常に同意。米国のデータは調べてみないと分かりませんが、周りを見てると子供を作る夫婦は2人3人と作ってる。ほんと、一人っ子はほとんど見ない。(一方で子供を作らない選択をしている人もいるのでしょうが、その比率は不明。)とにかく子供を1人連れてると「もう1人はいつ?」と聞いてくる。感じるのは、兄弟がいた方が子供にとって良い、純粋に家族が賑やかになって楽しい、1人だけの方が不自然、という純粋な感覚。もう一つ、こっちの人は子供に向ける視線が(過剰なほど)みんな親切。社会全体が「子供は大事」と思っている感じ。最後に、やっぱり教育費かな。よく分かんないけどこっちは奨学金制度が定着してるのか?幼稚園は高いけど、習い事は大学とか地域コミュニティの協力で安く済む。
振り返って日本はどうか。一人っ子が本当に良いのか。社会が子供を大事にするmindが本当にあるか?金銭的支援だけでなく社会的な雰囲気の醸成が必要な気がする。
うちももう1人作るかな。でもDardenは勉強厳しすぎて、奥さんケアできる自信ないんだよな。。ここまで言っといて何ですが。

torizou said...

>社会全体が「子供は大事」と思っている感じ。

確かに。

あと、アメリカにありがちな「いい加減さ」が良い意味で働いている部分がある気がする。日本だと、お母さんに向けられるプレッシャーってものすごくて「お母さんは子どもに対して完璧じゃなければいけない!」みたいなプレッシャーがあるけど、こっちはそのプレッシャーが低い気が。

折角だからこっちでもう一人生んじゃいましょうよ。アメリカ国籍とれますぜ~(笑

Anonymous said...

この件に関しては正直「言葉狩り」以外の何モノでも無いよなーと思って見ていました。確かに「機械」は不用意な発言ですけど。「中学の国語の試験問題でこの文章を読ませて、主旨を一言で纏めろと言われて女性は子供を生む機械だと答えたら0点だ」と橋下さん言ってたみたいですね。マトモな人事を言う人がやっと居たという思い。(しかも彼6人の父親なんですよね)

さて、本題。
「女性」を十把一絡げにしすぎて対策の焦点が定まって居ない点には激し過ぎるほど同意。

能力的な産める/産めない
配偶者の有無
経済的な制約・その他諸制約による産める/産めない
選択的な産みたい/産みたくない

それぞれによって取れる対策の方向がほとんど異なるはずですよね。

ところで去年は同期をはじめ、知り合いが凄い勢いで「ベビーラッシュ」。妊娠報告含めると2桁いきました。経済的な条件があまり変わらない中ですから、作る・作らないに関しては「結婚観」「家族感」の違いをそれぞれ反映しているようにも思いますよ。

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