2006-11-28

high technology, venture finance and wine

全ての科目が必修だった秋学期もまもなく終了。Berkeleyでは今週から春学期の選択科目のBiddingが始まっている。biddingというシステムはおそらく、大概のビジネススクールが採用している方法で、つまりは各生徒が持ち点を取りたい科目に振り分けてbidする、という仕組み。とはいうものの、Berkeleyは学校の規模が小さいせいもあってか、定員が溢れてしまうクラスはそんなに多くない。去年の同じ春学期だと、定員溢れがおこったクラスは3クラス。ただ、その3クラスが妙に「あー、Berkeleyっぽいなあ」というものだったので、ちょっと笑ってしまった。

溢れた3つのうちの2つはベンチャー関係。一つはOpportunity Recognitionという、ハイテクベンチャーのスタートアップに関する授業で、何でも教授がシリコンバレーのハイテクベンチャーに強い人脈を持っているらしく、超大物のゲストスピーカーが登場するらしい。もう一つはNew Venture Financeという科目で、これはベンチャーファイナンス関連。教授はなんと、シリコンバレー随一の法律事務所の共同経営パートナーでもある人。

で、最後の一つはというと「Wine Industry」という授業!

授業のトピックを見ると
·Wine finance - an examination of supply side, return on capital, and business risks in the wine industry
·Different models of success: the negotiant winery (buying grapes and bulk wine each year from outside sources) versus estate winery (growing each grape that goes into the bottle)
·Establishing a successful wine retail business through a differentiation strategy
·The complexities of distributing wine through the three-tier system (from winery to distributor to retailers)
·Wine-related start-ups – creating new ventures in a changing and growing wine industry

という感じで、finance、strategy、start-upなど様々な観点からワイン業界に切り込んでいる。Wine Industryは立派なビジネスフィールドなのだ。さらにBerkeleyはアメリカ有数のワイン製造地Napa Valleyのお膝元。地の利を生かして、ワイン業界から様々なゲストスピーカーも呼ばれるみたい。

人気授業のキーワードがハイテク、ベンチャーファイナンス、ワインとは、なんともうちの学校らしいなあ。

2006-11-26

After Dark

どうしても日本語の本が、それも勉強に関係ない本が読みたくなって、サンフランシスコの紀伊国屋で村上春樹の新刊(文庫版で、って意味ね)「アフターダーク」を調達。単に日本語で文章が読みたいだけなら、ネット上に面白い文章は一杯あるし、青空文庫には岡本綺堂の半七捕物帳(最近はまった)がフルラインナップでそろってるし、インターネットがあれば特に不自由はない。しかも紀伊国屋は高くって、実売価格は大体日本の1.5倍ぐらいだし。でもねえ、たまには紙の本が読みたくなるのだ。休日の午後、カフェでまったりコーヒーを飲みながら本が読みたいのだ。

で、アフターダーク。「アンダーグラウンド」を境に作品の中に現れるようになった「こちら側とあちら側」についての描写がよりストレートに書かれているなあ、という印象。ていうか、全編通してひたすらそのことだけを訴えている気が。平穏な世界の裏側には暴力と悪意に満ちた「あちら側」の世界あって、「こちら側」にいる私たちはその「あちら側」をあたかも他人事のように思っているけど、実はその二つに境目はない。悪意は、ある日突然私たちを「あちら側」に連れ去り、あるいはじわじわと気がつかないうちに「こちら側」に忍び込んでくる。そこに理由はない。「スプートニクの恋人」の中でもこの「あちら側とこちら側」というテーマがあちこちに散見していたけど、アフターダークでは登場人物の口を借りて、ストレートに述べている。こんな風に。

「二つの世界を隔てる壁なんてものは、実際には存在しないのかもしれないぞって。もしあったとしても、はりぼてのぺらぺらの壁かもしれない。ひょいともたれかかったとたんに、突き抜けて向こう側に落っこちてしまうようなものかもしれない。というか、僕ら自身の中にあっち側がすでにこっそりと忍び込んできているのに、そのことに気づいていないだけなのかもしれない」

「私らの立っている地面いうのはね、しっかりしてるように見えて、ちょっと何かがあったら、すとーんと下まで抜けてしまうもんやねん。それでいったん抜けてしもたら、もうおしまい。二度と元には戻れん。あとは、その下の方の薄暗い世界で一人で生きていくしかないねん」

ああ、すごくよくわかるなあ、この感覚。あんまりこういう言い方はしたくないけれど、年を重ねるごとに「自分の知らないところで自分を取り巻く悪意が存在して、気がつかないうちにそれに取り込まれる」恐怖というのが、分かるようになってくる気がする。そういうのって、どうしようもないのだ。怖い、と思っても、手のうちようがない。見慣れたいつもの風景は変わっていないけど、ある時ふと、そこに少しずつ歪みが生じていて、でも自分にはどうしようもない、そんな感じ。

アフターダークはそんな風に「あちら側」の存在と恐怖を丹念に描きながら、けれど「じゃあどうやってその世界に立ち向かっていけばよいか」は描かれない。ラストの夜明けのシーンが一つの希望なのかもしれないけど、でも日が沈めばまた夜がやってくる。「あちら側」の世界に囚われてしまうという恐怖からは逃げられない。ネットの意見なんかを見てると「消化不良」「何が言いたいのか分からない」という意見が結構あったけど、「何かを主張したい」のではなく、ただひたすら「こちら側とあちら側」を描写し、それを読者に見せることがこの本の目的なんじゃないかなあ、と思う。アンダーグラウンドの膨大なインタビューが、ひたすら「突如非日常に巻き込まれた人々の日常」を描き出そうとしたように。

本の裏表紙のあらすじのところでは「新しい小説世界に向かう村上春樹の長編」ってあったけど、村上春樹はいずれ、この「あちら側」の世界にどう対峙していくのか、という答えを書くのだろうか?それとも、「あちら側」の世界に立ち向かっていく術なんてないのだろうか?



余談その1.この話、真夜中の渋谷のデニーズで始まり明け方の東急東横線改札(書いてないけど、日吉に向かう急行列車っていったら東横線だよね?)で終わるのだけど、なんだが東京の、渋谷の風景がやけに懐かしく感じられる。夜明けの渋谷東横線の改札のシーンなんて、朝のざわめきとか発車の合図の音とか、今でもくっきりと覚えている。懐かしいなあ。

余談その2.突如文中に登場するスガシカオの「バクダン・ジュース」。深夜のコンビニで流れている曲、という設定だけど、村上春樹の本で日本の、現代の音楽が登場するのってこれが始めてでは?スガシカオ好きとしてはうれしいけれど、しかし何で「バクダン・ジュース」なんだろう。深夜のコンビニで流れているにしてはかなりマイナーすぎる選曲。何か意味があるのかな?

2006-11-25

Christmas is coming!

家族そろってディナーを食べるThanksgivingが明けると、翌日からは一大セールの始まり。なんでも、セールの目玉品を手に入れるために、徹夜で並ぶ人たちも大勢いるとか・・・

Thanksgiving明けのセールはいわば「クリスマス商戦」の開始日でもあるらしく、街中は一斉にクリスマスデコレーションに。写真は、チョコレートで有名なサンフランシスコのGhiradelli Squareのクリスマスツリー。最近は結構冷え込んできたけれども、それでも日本の同じ季節に比べると随分と暖かいここサンフランシスコ。寒くないのは助かるのだけど、そんな気候の中で点灯されるクリスマスツリーというのは、なんとなく奇妙な感じがするものですな。

2006-11-23

Keg Race

Fainanceのmid-termはとりあえず無事に終了。出来は不明だけど、まあ致命的なことにはなってないでしょう。きっと、多分、おそらく、もしかしたら。

全科目(といっても3科目だけど)のmid-term終了ということで誰もが弾けていた火曜の夜。生まれて初めてKeg Raceなるものを見物した。Kegとはミニ樽のことで、Keg Raceとは「樽に入ったビールをひたすら飲み干し、先に飲み干したチームが勝ち」というゲームで、要はひたすら狂ったようにビールを飲みまくるイベント。勿論、私は選手なんかじゃなくて、単なる見学者だ。なんと先週すでにKeg Raceの「予選」なるものがあり、そこで「飲める奴」が選手としてしっかり選ばれていたという。いつのまにそんなことに。

1チーム10人ちょっとで、1年生と2年生の対決。レースの会場は一軒家をシェアしている同級生のうちの裏庭。それほど広くもない、ごく普通の裏庭に、選手と見学者合わせると50人以上が集まっている。開け放った窓から外に向けられたスピーカーから流れる大音量のBGM。いつも思うのだけど、よくこういうパーティーやって、近所から苦情が来ないよなあ・・・・

(えーと、以下、食欲を減退させる描写が含まれますので、食事前の方は読まない方がいいかと・・・)

さてこのKeg Race、「狂ったようにとにかく飲み続ける」って意味では日本の飲み(特に大学の時の飲み会とか)とそれほど変わらないように思えるのだけど、一点大きく異なる点が。このKeg Raceでの飲みは、基本的に「ヤバくなったら、吐く」ことが大前提に設計されている。それも、限界がきたらトイレで吐いてくるとかじゃない。会場の真ん中に、ビニール袋を敷いたゴミ箱が「吐き用」として設置されているのだ。

庭の両側にはそれぞれのチームのビール樽とテーブル、コップ。レース開始と同時にそれらをひたすら飲み続けるのだけど、準備されているビールの量は明らかに参加者の許容量を越えている。なので、最初はみんながんがん飛ばして飲むのだけど、そのうち大概の人は限界がくる。で、やばくなったらどうするかというと、会場の中央に設置された容器めがけて、その場で吐く。ただし、「吐いたら相手チームの分を1カップ飲まなければいけない」というルールがある。なので、「あ、ヤバイ」と思った人は、「どうせ吐くなら」ということで、その直前、限界いっぱいまでビールを胃に詰め込む。で、一気にリバース。その風景で盛り上がる観客。ばっちり「そのシーン」を写真に収めている人もいるし。

いや、私も「莫迦飲み」は嫌いじゃないよ。大学の頃(航空部とかね)は分けの分からない飲み方もしてました。最近はちょっと年をとったせいか、あまりそういった莫迦飲みはしないけど、でも一応「飲む」だけなら、そういったぶっちゃけはっちゃけな雰囲気に溶け込むこともできるよ、うん。

でもね、あの「人前で吐く」ってのには、なんかものすごい抵抗感が。そいで、それで盛り上がれる雰囲気には、やっぱりどう頑張ってもついていけないものが・・・・

一応、レースの最後まで見届けたものの、さすがに「このままここに居続けると、マジで今晩はご飯が食べれなくなりそうだ・・・」と思い、レース終了後早々に日本人同級生と退散。盛り上がる雰囲気は好きなんだけど、ヤバイマジで食欲が減退してきた・・・と話しながら、あっさり冷麺でも食べようと韓国料理屋に向かう。

なんというか、この世には「どうやっても超えられない文化の壁」があるのだなあ、ということを、まじまじと見せ付けられたイベントでした。折角アメリカに来てるんだし、頑張ってアメリカ文化を楽しもうとは思うんだけど、どう頑張ってもあのレースを心から楽しむことはできないなあ、と。まあ確かに、あれだけのアルコールを吐かずに飲むと、急性アルコール中毒になることは確実なわけで。その意味では合理的なシステムといえないことはないのだけど。

でもねえ。飲むのはいいんだけどさ、吐くなら人の見てないところで吐こうよ・・・・

2006-11-20

Chicago, Boston, Berkeley

ボストンに行ってきました。目的は就職活動。ボストンキャリアフォーラムという,アメリカにいる日本人留学生を採用したい企業のあつまるジョブフェアがあり、そのイベント目掛けて全米から日本人留学生が集まるわけです。その数はおそらく1000人は下らない。さして大きくもないボストンの街にこれだけの日本人が集まるという異様な数日間。会場の隣のWestin Hotelにはおそらく企業の人が大勢泊まっているらしく、ロビーはなんかもう、完全に日本のホテルと化してました。聞こえる言葉がひたすら日本語。私が泊まったのは会場から2キロほどの小さなホテルなのだけど、そこですら大量の日本人が。地元の人もきっとびっくりしてるだろうね。

就職活動といっても私はまだ1年生なので、来年の夏のサマーインターンのポジションの獲得が目標なわけです。1ヶ月ぐらい前からサンフランシスコに来た会社と面接したり、電話で面接したりと少しずつ就職活動が始まっていたわけだけど、いわばその一つのピークがこのボストン。学校の授業と平行してなので、結構しんどい。先週末はある企業の面接を受けにシカゴへ、今週末はボストンへと、物理的に時間をとられることに加えて、やっぱり「Selectionの対象となっている」という緊張感は結構ストレスがかかる。

キャリアフォーラムでは結構な数の面接を受けたのだけど、そういった微妙なストレスを感じながら30分交代ぐらいで次々人に会って、何度も自己紹介やら志望動機やら喋っていると、段々と感覚の一部が麻痺してくるような感じが。なんか、真剣に喋っている自分をどこか遠いところから眺めながら、ふと「っていうか私、何をこんなに真剣に喋ってるんだろう?」などと思ってしまうのだ。おそらく、普段使わない部分の神経が極度に疲労した挙句、その状態から逃避しようとしていたのだと思うのだけどね。

まあそこでストップしてしまっては困るので、またもや「一人RPG状態」モードに気持ちをセットして、ひたすら喋り倒した2日間でした。一つ面接を通過するごとに「一面クリア!」ってな感じで。おかげさまで何とか夏のインターンは確保。来年の夏は日本に帰ることになりそうです。



ところで、先週・今週と飛行機を乗ってアメリカを横断したのだけど、国内線だと安心して日本の飛行機と同じような感覚でいたら、結構「マジですか?」的な出来事があった。もしかしたらこれって常識で、私がそれを知らなかっただけなのかもしれないけど・・・搭乗15分前のチェックインでOK、一度チェックインすればよほどのことがない限り飛行機は全員搭乗するまで待ってくれる、といった日本の飛行機に慣れきった身にすると、結構「やばっ」という場面もありました。友人から聞いた話も含めて、こんな感じ。

・チェックインの時にIDを見せる必要がある。goverment issued IDが必要なので、学生証ではだめ。先週シカゴに言った時はそんなことは全く知らず、パスポートを不携帯で行ったので結構焦った。しかしなぜか行きの便では「学生証+日本の免許証」でOKだった。日本の免許証ってあれ、完全な日本語表記でこっちの人が見ても全く読めないはずなのに、何故だ。しかし帰りの便ではこの免許証技は使えず、チケットに「SSSS」としっかり書かれた上で、別のレーンに案内されて念入りにボディチェックされた。SSSSって何だろう。Super super super suspected(超超超怪しい) とか?

・相変わらず液体類(化粧品とかハンドクリームとか)は持ち込めないのだけど、なぜかジップロックに入れればOK。入れるだけで、別に検査もなにもされません。な、何故??ちなみに、化粧品とかでも体積の大きいものは取り上げられるらしい。当然ペットボトルの水は取り上げられます。悔しいからその場で飲めるだけ飲んだけど。

・チェックインを済ませていても手荷物検査で時間を食って搭乗が遅れたら、飛行機は飛んでいってしまう、らしい。これは友人談。日本の飛行機だととりあえず一度チェックインしてしまえば、絶対に航空会社の人が走り回って探してくれるのに・・・

・そしてさらに、チェックインの締切時間がかなり早い、みたい。出発40分前についた友人は「チェックインは45分前までなので、アウトです」って言われたらしい。これは極端な例かもしれないけど、日本に居たときみたいに「出発15分前に駆け込んでチェックイン」はできないようだ。不便だなあ。



そんな感じな週末。日曜の夜にようやくBerkeleyに帰ってきたと思ったら、早速明日はFinanceのmid-termです。ヤバイ・・・

2006-11-13

Rainy Season?

夏からこっち、毎日毎日毎日毎日ひたすら晴れていたBerkeleyの天気もやや変わりかけてきた感じです。先々週ぐらいから曇りの日が増えてきたなー、と思っていたら、昨日の晩から今日にかけて本格的な雨。「傘ささないと辛いかな?」と思う程度の雨はこっちに来て二度目ぐらいだけど、これから段々と雨の日が増えていくのでしょう。いよいよ雨季突入?ちょっと憂鬱ですねー

そういえば日本ではPS3が発売されたものの、いろんな意味で大騒ぎになっているとか生産がおいつかなくて10万台しか発売できず大混乱、とか、互換性の不具合が出てる、とか、しかもその不具合に対する広報のコメントがちょっとそれひどいんじゃないの??とか、実は購入されたPS3のうちかなりの数がヤフオクで転売されているみたい、とか。「私たちも寝ずに頑張ってるんです」なんて言っちゃいけないよね。どこぞの牛乳会社の社長の「私は寝てないんだ!」があれだけ批判されたのを覚えてないんでしょうか・・

今学期はCore科目でMarketing, Finance, Accountingと取っているのですが、Marketingのケースには結構日本企業が登場します。大体が「主役企業(海外の企業)の強敵」として描かれているのが面白いところ。で、そのケースの中のSonyは、はっきり言って輝いてます。ニッチな高画質プロジェクター市場で頑張っていた企業がいたのだけど、Sonyがさらに高画質、しかも低価格な製品を出してきて、Sonyすげえ!俺ら勝ち目あるのかよ・・・∑(゜△゜;)・・・みたいなケースもありました。あと、まだやってませんが、Sonyのカーナビゲーションのマーケティング戦略のケースも予定されてるみたいです。多分このマーケティングの授業の中では、唯一の「ケースの主役」の日本企業。

ケースを通じて「やっぱり日本のモノづくりのパワーってすごいな。Sonyすごいなー」と思っているその傍ら、現在進行形でそのパワーが落ちてきているのでは?と思われるようなニュースを耳にすると、なんともせつない気持ちになりますね。日本人としてはUp to dateな情報をクラスで共有するために発言する、というのが使命かもしれませんが、「いや、そうは言っても今のSonyはマジやばいよ!」ってのは、あんまり言いたくないよなあ。あ、私は別に大してSonyファンではないのだけど。

迷走するSonyの現状を解説した久夛良木氏を見放したソニーの迷走という記事、これは面白かったです。そのうち「グループ戦略の失敗」なんて事例でケースに登場しないことを祈ります・・・

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