1ヶ月ほど前にBay Areaを騒がせたニュースといえば、高速道路のメルトダウン事件。サンフランシスコからベイブリッジをわたった直後のジャンクション、通称"マッカーサー・メイズ"を通過中のタンクローリーが横転し、搭載していた燃料に火がついて炎上。このあたりは複数の高速道路が立体交差になっている場所なのだけど、この炎上した炎と熱で上の高速道路が炙られたような形になり、なんと鉄骨がとけて道路が崩落。
こんな感じで大炎上し
その結果、こんな姿になってしまいました。高速道路が飴のようにぐにゃりと曲がっている。なんというか、いろんな意味でありえない。
さて、事故当初は復旧までに早くて8週間、下手すると数ヶ月かかる、といわれていたのだけど、Bay Areaローカル放送局のウェブサイトを見ると、なんと本日から復旧するとのニュース。事故から約1ヶ月。正確には、工事事業者が決定したのが5月8日なので、実質の工事期間は20日弱。これまた、いろんな意味でありえない・・・・
一体どんな裏技(?)が使われたのか。ポイントは、この復旧工事の報酬の仕組み。
サンフランシスコ、イーストベイ、サウスベイをつなぐマッカーサー・メイズはBay Areaの交通の要所。復旧が遅れると、その経済的損失は非常に大きい。ということで、復旧工事の事業者選定にあたってカリフォルニア州は、予定よりも早く完成した場合に対してのインセンティブ制度を設けた。当初の工事完成予定日は6月27日。ここから、完成日が1日早まることに、建設事業者は20万ドル(約2400万円)のインセンティブを受け取れる。逆に、6月27日から完成日が1日遅れるごとに、事業者は州に1日20万ドルあたりを払わなければいけない。
復旧工事を落札したのはCordova firmをいう建設会社。落札価格は86万7000ドルで次点になったCalifornia Engineering Contractors Inc.の110万ドルよりかなり抑え目の値段。しかし、Cordova firmの見積もりは、なんと「工事を予定日より25日早く仕上げる」というもの。これが達成できれば25×20万ドル=500万ドル(約5億円)の追加収入が得られる(ただし、インセンティブの最高額は500万ドルだそうだ。急ぐあまり手抜き工事をされても困る、ってことでしょうか)。
というわけでCordova firmは昼夜を問わず工事を続け、その結果予定よりもさらに1週間以上も早い本日reopenとなった、というわけ。
わずか15日で落下した50メートルの高速道路を繋いだ建設会社もすごいけど、事故からわずか1週間のうちに「とにかく一刻も早く復旧させるため」のインセンティブ制度を設定したカリフォルニア州の意思決定の早さとフレキシブルさも、なかなかどうしてすごいものじゃないかと。日本の自治体には真似できない技ですね。これまたいい意味で「ありえない」。
それにしても、これだけの大事故が起こっていながら、「高速道路の耐熱安全性」に関する議論が起きていないあたりも、さすがアメリカというかなんとうか。これが日本だったら、全国の高速道路の耐熱性一斉検査、なんてことになっているのでは。ワイドショーで「高速道路安全神話の崩壊!」なんて特集が組まれたりして。
まあアメリカ人はきっと「ま、タンクローリー炎上じゃあしかたないよな。別に高速道路に欠陥があったわけじゃないし」なんて思ってるのでしょう・・・
Let bygones be bygones. Life goes on, and so must we!
2007-05-24
いろんな意味でありえない
Posted by
torizou
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16:04
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- torizou
- 尼崎に25年。その後横浜→Berkeleyを経て再び東京に。 飛行機(陸上単発)とグライダーの自家用操縦士。投資銀行の中の人。
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1 comment:
ごぶさた。たぬーきんです。
そちらの役所のスピードがうらやましい。
こっちの役人のオッサンも当然土木工学科卒だけど、中学生ならわかるであろう説明を丁寧にして
「この点に関して、1984年に編み出された(実績も100件を超えている)こんな工法でするとアホ設計よりこれだけ安く早く、かつ、より精度良くできますよ」
と説得すると、それだけでは頑として通らない。たいていこんな回答が電話で(紙じゃなく)来る↓
「そっちの工法の方が良いことはわかった。しかしそれを認めると、設計段階で現設計を認めた○○さんの立場が悪くなってしまう。だから次年度に設計段階に入る別工事でその工法を検討してみる。今回は設計変更提案書を提出しないこと。提出してしまうと採用しない私の立場も悪くなってしまうから。」
こうやってマジメなゼネコンによる税金の節約企画は却下されているのです。
んで今は、立場立場立場立場とヤカマシイ役人の立場を守りつつ、むしろ役人のお手柄となるベシャリを工夫しながらアホ設計をガンガン変更するように頑張ってる。
ちなみに高速道路のような公共の構造物は、夏の酷暑はともかく火事による耐熱性など考えません。考えようと思ったらすぐできるし、これから造る高速道路を全て火事対応にできるけど、値段が跳ね上がる。確立からして200年に1回未満であろう火事によるリスクのために1000万$/kmくらいジャブジャブ税金を使えないだろ。
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