2007-01-22

落第級仕事人の集積地

アメリカのサービスのいい加減さについてはあちらこちらで書かれているようだけど、本日はその総本山とも言うべきDMVに行ってきた。DMVとはDepartment of Motor Vehiclesで、日本でいうところの運転免許センター+陸運局の事務所、みたいなところ。免許の取得やら車の登録やら、車に関する作業を一手に担っているお役所。ワタシの目的はTemporaryの免許証の発行。DMVで筆記試験に合格して、かつ日本の免許証があれば、Temporaryの免許証を発行してもらえるのだ。9月に筆記試験を受けて、そのあとしばらくほったらかしになっていたのだが、ようやくちゃんと免許をとるかと重い腰を上げたところ。

ちなみに、アメリカには「自動車教習所」なるものはない(プライベートで、ドライビングレッスンをやってくれるサービスはあるようですが)。免許を取るには1.筆記試験をうける、2.筆記に合格したら路上試験を受ける、3.免許取得、というステップ。1と2の間には、免許を持っていないにも関わらず、自分で練習して路上試験を受けましょう、という前提になっているようです。しかも、3の路上試験を受ける際には自分で車を持ち込む必要あり。一応、「同乗者に運転してきてもらう」ことが前提のようですが、それにしてもあまりにアバウトな・・・・

さてこのDMV、サービスのダメっぷりには定評あり。渡辺千賀さんの「ヒューマン2.0」の中でも「生粋のアメリカ人でも頭をかかえる落第級仕事人の集積地」なんて書かれているくらい(落第級仕事人の定義は「要求されたことを要求されたとおりに実行できない」だそうで)。日本では公的機関のサービス精神のなさを「お役所仕事」なんて揶揄するけれど、このDMVこそまさに、お役所仕事も極まれり、という感じ。

窓口に行って筆記試験の合格証と日本の免許証を見せ、「Temporaryの免許を発行してください」というと、キーボードをかちゃかちゃとたたいたお姉さんが困ったような顔をしている。何だ何だ?と思っていると、私に向かって一言「あなた、筆記試験は合格している?」

ハア?合格しているもなにも、私がアナタに差し出したのは、筆記試験を合格したときに貰った紙なんですが。そういうとお姉さん、「うーん、でも、コンピューターにあなたの合格データが入っていないのよね」

ちょー。ちょっとまってよー。なにさ、それ。ちゃんとここに書いてるじゃん!とまくし立てる私を横目に、お姉さんは奥の方にいたちょっと偉そうな感じの上司Aをつれてきて、なにやら相談している。キーボードをいろいろと打ち直したり、困ったわねえ、なんて言ったり。まさかここに来てもう一回筆記試験?それだけは避けたい。大して難しい試験ではないけど、でも一応直前にちょこっとは勉強しなくちゃいけないし、何よりそんなめんどくさいことはイヤだ!

内心かなり焦るワタシを尻目に、困ったわねえ、なんてCrazyなコンピュータなんだ、これを入力した担当者はFuckinだ、などと機械と入力者を責めるお姉さんと上司A。日本とは異なり、ここで客(ワタシね)に「申し訳ありません」なんて言葉は当然ない。彼らにしてみれば、自分たちのせいじゃないのにトラブルに巻き込まれて、全くメンドクサイわねー、なんて気分なんだろう。

とりあえず、どうでも良いからもう一回試験を受けるのだけはイヤだ!と祈っていたところ、どうやらその最悪の状況は避けることができたみたい。どういう裏技を使ったのか、コンピュータのワタシのデータを「筆記試験合格」に書き換え、無事にTemporaryの免許証をゲットすることができた。

さて、ワタシの手元には紙の合格証明書があったにも関わらず、コンピュータにはデータが入力されていないという奇妙な事態。なんでこんなことが発生したのか。お姉さんと上司Aの推測は、以下のとおり。

私の筆記試験の結果を受け取った職員が、コンピュータに合格データを入力する。

合格データの入った証明書をプリントアウト

プリントアウトされた証明書を取りに行く

戻ってきて、データをセーブせずに、プロセス終了


・・・・・Σ(゜д゜lll)

・・・・・Σ(゜Д゜)


ありえない。まったくもってありえない。初心者の使うワードじゃないんだから。プリントアウトしに行く前にセーブしろよ、ていうか、セーブしてないのにプリントアウトできるようなシステムにしてること自体が・・・・orz

そんなところです、DMVってのは。ちなみに、最初に試験を受けに行ったときも、「あ、免許はSSN(ソーシャルセキュリティナンバー:アメリカ版住民基本台帳番号みたいなやつ)がないと取れないから、まずそれを取得してから来てね」と追い返されそうになった。これは全くの間違いで、SSNが取れない留学生なんかはナシでも免許の試験を受けられる。その時は、隣の窓口で手続きしていた同級生を指差して「彼もSSNないけど、あっちは手続きしてるじゃん!」と食い下がり、事なきを得た。こんな風に、明らかに間違っていることを何の疑問もなく遂行しようとする素敵なアメリカのお役所。これに比べりゃ、日本のお役所なんて全然マシ(そもそも、ここ最近、特に市役所なんかのサービスレベルの向上には目を見張るものがあるしね)。

ともあれ、なんとかTemporaryの免許をゲット。あとはこの勢いが衰えないうちにさっさと実技試験を受けてしまって、早いとこ免許をゲットしなければ。

4 comments:

Anonymous said...

連邦や州の中央省庁だと90年代以降、パフォーマンス評価をある程度するようになったのですが、末端の方のエージェンシーは全くだめですね。何だか17:00に仕事を終えることが全てのモチベーションの源泉になってる気がします。身近だとPostal Officeとかも、人によって全然言うことが違うので、一応二人か複数のofficeで同じことを言ってない限り信用しないことにしてます。アメリカ人も不満たらたらです。DMVは私も昔泣かされました。。。

torizou said...

>一応二人か複数のofficeで同じことを言ってない限り信用しないことにしてます

あー、これ超重要ですよね。
奴らは基本的に、間違っていることを堂々と主張しますからね・・・

Anonymous said...

でもそのいい加減さのおかげで一回で合格できたとうちの母は感謝しておりましたよ(^^;

torizou said...

友人は実地試験を受けに行って、最後の講評のところで「あなたはこことこことここがダメ・・・」と言われながら一杯×をつけられ、「あーこりゃだめだわ」と思ったそうですが、神妙な顔をして「そうですね、これから気をつけます」などと言っていたら、最後には「でもまあ、こことこことここはちゃんと分かってるみたいだし・・・」と×の数が消えていき、合格したそうです。

という私もようやく2月末に実技試験ですわ。

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